チョコレートミルクレープは、薄く焼いたクレープと口溶けの良いチョコクリームを何層にも重ねて仕上げる“断面勝ち”のケーキ。
まずは材料と道具をシンプルに揃え、ダマのない生地づくり・温度管理・均一な層作りの3点を押さえれば、家庭でもパティスリー級の見栄えに到達します。この記事では、生地・クリーム・組み立て・保存・アレンジの順に要点を整理。分量の目安や道具の選び方も明記し、初心者の失敗ポイントも回避できる実践的な内容にしました。
- 生地:粉はふるい、作ったら冷蔵で休ませて薄く均一に焼く
- クリーム:溶かしチョコの温度とホイップの硬さを合わせて分離防止
- 組み立て:各層の厚みを一定にし、側面を押さえて形を整える
材料と分量の早見表(18〜22cm対応)
家庭のフライパン(22cm程度)でも、パティスリーの型(18〜20cm)でも作れるように、サイズ別の分量を整理しました。無糖ココア・製菓用チョコレートを基準にしています。
| 項目 | 18cm(約20〜22枚) | 20cm(約18〜20枚) | 22cm(約16〜18枚) | メモ |
|---|---|---|---|---|
| 薄力粉 | 120g | 140g | 160g | ふるってダマ回避。強力粉10%ブレンドでコシUP |
| 無糖ココア | 18g | 20g | 22g | ブラック派は+2〜3g、優しめは−2g |
| 砂糖 | 35g | 40g | 45g | 焼き色・保湿に寄与。三温糖可 |
| 塩 | ひとつまみ | ひとつまみ | ひとつまみ | 甘味を締める |
| 卵(M) | 3個 | 3個 | 4個 | 常温に戻す |
| 牛乳 | 420ml | 480ml | 520ml | 半量を温めると溶けやすい |
| 水 | 60ml | 80ml | 100ml | 薄さと軽さを出す調整水 |
| 溶かしバター | 30g | 35g | 40g | 香りと離型性UP。太白ごま油可 |
| コーンスターチ(任意) | 10g | 12g | 14g | しなやかさUP・破れにくい |
| バニラ(任意) | 少々 | 少々 | 少々 | エッセンス/ペースト/ビーンズ可 |
チョコレートクリーム(ガナッシュホイップ)分量
| 項目 | 18cm | 20cm | 22cm | メモ |
|---|---|---|---|---|
| 製菓用チョコ(カカオ55〜62%) | 160g | 190g | 220g | タブレット推奨。刻みを均一に |
| 生クリーム35%(加熱用) | 160ml | 190ml | 220ml | 沸騰直前まで温める |
| 生クリーム42%(後入れ泡立て用) | 200ml | 240ml | 280ml | 冷やしておく。35%でも可 |
| 粉糖 | 20g | 25g | 30g | 甘さの微調整に使用 |
| ラム/オレンジリキュール(任意) | 小さじ1 | 小さじ1.5 | 小さじ2 | 香り付け。加熱不要 |
| 板ゼラチン(任意/夏場) | 2g | 3g | 4g | 保形性UP。ふやかして使用 |
使用する道具
- フライパン(底が平らで熱ムラの少ないもの)またはクレープパン、薄刃フライ返し
- ボウル2〜3個、泡立て器、ゴムベラ、こし器(またはストレーナー)
- 温度計(あると失敗激減)、計量カップ・スケール
- ケーキ回転台(あれば組み立てが楽)、パレットナイフ、ケーキカード
- 丸型(セルクル)18〜22cm、ケーキフィルム、クッキングシート
クレープ生地の作り方と焼きのコツ
- 粉類(薄力粉・ココア・コーンスターチ・砂糖・塩)をボウルでよく混ぜ合わせ、必ずふるう。
- 別ボウルで卵を溶き、温めた牛乳の一部(人肌〜40℃)を少しずつ加えて伸ばす。
- 粉類に卵液を少量ずつ加え、中心から円を描くように混ぜる。ダマが見えたら一度止め、ゴムベラで底をこそげる。
- 残りの牛乳と水、溶かしバター、バニラを加えて混ぜ、ストレーナーでこす。ここでのひと手間が命。
- 生地をラップで覆い、冷蔵で最低1時間(理想は3時間〜一晩)休ませる。粉が水和し、破れにくくなる。
- 焼く直前に生地の粘度を確認。レードルで持ち上げてリボン状に落ち、2〜3秒で消えるくらいが適正。濃ければ水を小さじ1ずつ追加。
- フライパンを中火で温め、薄く油を塗る(キッチンペーパーで余分を拭う)。最初の1枚は試し焼き。
- お玉7〜8分目(18〜22cmで約40〜55ml)を素早く流し、鍋を回して全面へ均一に広げる。気泡は竹串でつぶす。
- 表面が乾き縁がわずかに色づいたら、薄刃のフライ返しで端をめくって一気に返す。返しは5〜10秒でOK。
- 焼けた生地はケーキクーラーに重ねずに並べて粗熱を取る。乾燥を防ぐため、冷めたらラップで軽く覆う。
火加減・時間の目安
| パン種類 | 予熱 | 焼成時間(片面) | 返し後 | ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 鉄・カーボンスチール | 中火で2〜3分 | 35〜55秒 | 5〜10秒 | 蓄熱性高い。温度が上がりすぎたら一旦外す |
| テフロン(フッ素) | 中火で1〜2分 | 45〜60秒 | 5〜8秒 | 油は極薄でOK。表面を傷つけない |
| 銅(専用クレープパン) | 中弱火で短時間 | 25〜40秒 | 3〜5秒 | 熱伝導が均一。動作はより迅速に |
よくある失敗と対策
| 症状 | 主因 | 対策 |
|---|---|---|
| ダマが残る | 粉の投入が早い/ふるっていない | 必ずふるい→卵液は少量ずつ→最後にこす |
| 破れる・縮む | 休ませ不足/火力過多 | 最低1時間休ませる。焼きは中火基準、予熱しすぎない |
| 厚さが不均一 | 流し込み量・回し方が遅い | レードルを一定量に。流した瞬間に素早く回す |
| 生地が乾く | 冷却中に露出 | 冷めたらラップで軽く覆い、重ね置きしない |
チョコレートクリームの作り方(分離ゼロの温度管理)
- チョコを5mm程度に刻む。生クリーム(加熱用)を鍋で80〜85℃まで温める(沸騰させない)。
- 刻んだチョコへ温クリームを一気に注ぎ、30秒置いてから中心から小さな円を描き乳化させる。ツヤが出るまで混ぜる。
- 必要に応じてふやかした板ゼラチンを溶かし入れる。ボウルの底を氷水に当て、27〜30℃まで軽く冷ます。
- 別ボウルで冷えた生クリーム(後入れ分)を7分立てまで泡立て、粉糖を加えて8分弱に。
- 乳化済みガナッシュにホイップを3回に分けて加え、ゴムベラで底からすくって合わせる。混ぜすぎはNG。
- 香り付けのリキュールを加え、絞れる硬さ(8〜8.5分立て)で使用。柔らかければ10〜15分冷蔵。
カカオ濃度と甘さの調整
| チョコ濃度 | 口当たり | 粉糖調整の目安(20cm) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 55〜60% | マイルドで子ども向け | 25〜35g | ココア増でビター寄せも可 |
| 62〜66% | バランス型(おすすめ) | 20〜25g | 最も層の表情が安定 |
| 70〜72% | ビター大人向け | 10〜18g | 後入れホイップ多めで角を取る |
硬さの基準(ホイップの見極め)
- 7分立て:線が残るがすぐ消える。サンド用には柔らかい。
- 8分立て:ツノがやや倒れる。層用の基本。
- 9分立て:ツノが立つ。側面のナッペや夏場の安定に。
組み立て(重ね方・仕上げ・カット)
- 土台に丸型を置き、底にクレープを1枚敷く。以後、1層=生地1枚+クリーム15〜22gを目安に。
- パレットで中心から外へ薄く均等に伸ばす。外周5mmは薄めにしてはみ出しを防止。
- 2〜3層ごとに軽くカードで押さえ、気泡を抜き高さを均一化。冷蔵5〜8分の“小休止冷却”を挟むと崩れにくい。
- 最上段はクレープで終え、ラップ→冷蔵で最低2時間(理想4〜6時間)落ち着かせる。
- 仕上げはココアを茶こしで薄く振る、または簡易グラサージュ(ココア・水・砂糖・ゼラチン)で艶仕上げ。
層と高さの設計
| 枚数 | クリーム/層 | 最終高さ目安 | 難易度 | 用途 |
|---|---|---|---|---|
| 16〜18枚 | 18〜20g | 5.5〜6.0cm | ★ | はじめて・家庭用 |
| 20〜22枚 | 16〜18g | 6.0〜6.5cm | ★★ | 記念日・写真映え |
| 24〜26枚 | 14〜16g | 6.5〜7.0cm | ★★★ | しっかり層感・上級者 |
カットを美しく仕上げる手順
- 冷蔵後さらに15〜20分冷凍で“半固まり”にしてからカット。
- よく切れる長刃を1カットごとに温水で温め拭く。引いて切るのがコツ。
- 12カットなら時計の12・6・3・9の順に割ってから等分。
保存方法・日持ち・持ち運び
- 冷蔵(0〜5℃):ベストは当日〜翌日。フルーツなしで48時間、バナナなど水分の多い果物入りは24時間以内。
- 冷凍:ホールはセルクルのままラップ→袋。ピースは1個ずつ包む。−18℃で2〜3週間。
- 解凍:冷蔵でゆっくり4〜6時間。室温解凍は離水の原因に。
- 持ち運び:夏場は保冷剤2個以上+断熱バッグ。移動30分超はケーキ箱の内側にフィルムを。
| 条件 | 日持ち目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| プレーン(果物なし)冷蔵 | 48時間 | 表面乾燥を避けるため密着ラップ |
| バナナ/ベリー入り冷蔵 | 24時間 | 果汁で層が滑るため積層は薄く |
| 冷凍(ホール) | 2〜3週間 | 解凍後は再冷凍不可 |
| 冷凍(カット) | 2週間 | 個包装して霜防止、食べる前日に冷蔵へ |
アレンジ・バリエーション
風味アレンジ
- ヘーゼルナッツ&プラリネ:ガナッシュにヘーゼルナッツペーストを生地比5〜8%で。クランチを中層に。
- オレンジ&グランマルニエ:皮のゼストを生地に少量、クリームにリキュールを。仕上げはコンフィチュール薄塗り。
- エスプレッソ・モカ:生地の水の一部を濃いめのコーヒーに置換。ビター派向け。
- ラムレーズン:水気を切ったラムレーズンを層の点在に。甘さ控えに相性抜群。
食感アレンジ
- 薄焼きクレープ・デンテルを1〜2層に挿入してパリッと食感のコントラスト。
- ナッツプラリネの薄板を中央層に入れると“層映え”が一段増す。
食事制限対応(代替のヒント)
| 目的 | 置換 | 注意点 |
|---|---|---|
| グルテン控えめ | 米粉70%+タピオカ30% | 水分を5〜10%増、休ませ時間長めに |
| 乳不使用 | 豆乳/オーツミルク+ココナッツクリーム | ココナッツ香が勝ちやすい。甘さは控えめに |
| 砂糖控えめ | エリスリトール+微量蜂蜜 | 保湿が落ちるためガナッシュ比率を上げる |
提供シーン別の提案
- 写真映え:側面はナッペせず層見せ。カット面にカカオニブを数粒。
- 手土産:高さ6cm・20cmホールを12等分。保冷剤2個と“要冷蔵”シールを忘れずに。
- 誕生日:トップにグラサージュ+金箔少量。ろうそくは中央ではなく端寄せで蝋の流入を防ぐ。
まとめ
チョコレートミルクレープ成功の鍵は、①ダマなしで香ばしく薄いクレープ、②口溶けと保形性のバランスが取れたチョコクリーム、③層の厚みと温度管理の徹底の3点です。
生地は休ませて水分を均一化し、クリームはチョコと生クリームの温度差を小さくしてから合わせると失敗が激減。重ねる際は1層ごとにカードで軽く押さえ、側面を整えながら高さを出すと断面が美しく仕上がります。冷蔵でしっかり落ち着かせてからカットすれば、ナイフ汚れも最小限。保存・持ち運び・冷凍のコツや、ガナッシュやナッツ、果物でのアレンジまで押さえれば、食感と見た目が両立したレシピの軸が完成します。


